高村光太郎の妻、智恵子。
二本松の造り酒屋に生まれ、
いつも阿多多羅山の上に広がる青い空と、
眼下に光る阿武隈川を見て育つ。
女性洋画家の道を選ぶが
高村幸太郎と結婚後は、
主婦業に追われ、十分な創作活動が出来ず。
評価もされず。
夫の高村光太郎は、彫刻家としても詩人としても活躍。
その横でうまくいかない自分の人生を儚み、
精神疾患を発症。
最後は精神病院入院中に肺結核で命を落とす。
東京には空がない。
阿多多羅山の上に出ている空が
ほんとの空だと嘆く智恵子。
それをあどけない空の話と片付ける光太郎。
最後にレモンをかじりながら、
智恵子は何を思っただろう。
智恵子の言う本当の空を見に、
秋の日に安達太良山に登ってみた。
火山である安達太良山は、
硫黄のにおいと
異世界感のある火口を持つ
荒々しい山だった。
稜線は強風が吹き、
火口の奥に磐梯山が見えた。
この山に智恵子は一度でも
登ったことがあったのだろうか。
このゴツゴツした黄色い岩の上を
歩いたことがあったのだろうか。
二本松の裕福な造り酒屋の実家から
美しい山を眺めていただけなのではないのか。
今度は二本松の町から
智恵子の見たであろう安達太良山を
遠くから眺めてみたいと思った。
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