5年以上前、まだ山を始めたばかりのころ。
谷川岳のふもとを歩いて
一の倉沢へ行くのが好きだった。
土合駅の階段を登って
土合橋から新道を歩く。
新道入り口に蓬峠9.5kmとかかれた標識がある。
蓬峠、いい響きだ。
いつか蓬峠まで歩いてみたいと思っていた。
先月初めて土樽駅で下車し、
茂倉岳に登った際に
蓬峠の看板を見つけた。
どうやら土合からと土樽まで、
蓬峠経由で歩けるようだ。
それなら何も店のない土樽からスタートして、
カフェのある土合をゴールにした方が楽しい。
帰りの手段も上越線だけでなく、
水上までバスが出ているし。
夏の山は暑い。
谷川連峰は特に暑い。
でも蓬峠なら峠道だから
急登ということもないだろう。
川や沢も多く、
涼し気な山歩きが出来そうだ。
実際歩いてみると想像通り。
ただ、道が細く歩きにくい。
何度も沢を渡り、
その度に冷たい水で首を冷やす。
樹林帯を長く歩くので、
日が当たらず風が吹くと
思ったより涼しい。
樹林帯を抜け笹原に出ると、
馬蹄形の山々が顔を出す。
ああ、谷川連峰だと
感慨深い。
蓬峠ヒュッテの周りには池塘があり、
ニックキスゲとキンコウカがお出迎え。
楽園が広がっていた。
三連休なのにすれ違った人は一人だけ。
天国ロードを独り占めだ。
前回の仙丈ケ岳は
人が多くて歩きにくかった。
誰もいないと自分のペースで歩ける。
やっぱり谷川連峰はいいなあ。
ところが道が茂倉岳と土合の分岐にでると、
茂倉岳への道は天国ロードなのだが
土合方面は草が生い茂っている。
嫌な予感。
あまり歩かれていないようだ。
笹やコバイケイソウ、アザミをかき分けて進む。
途中崩壊して赤土がむき出しの斜面を
何度もトラバースする。
そして何度目かの斜面で、
先へ進む道を完全に見失った。
ピンクテープが何か所かあり、
その先に進もうとするが道はない。
道なき道を進むと、
柔らかい土と埋まっていない石が崩れ、
とても歩けない。
30分ほどさまよい、
もう土樽へ引き返すしかないかと
少し道を戻ったら、
ようやく登山道を発見した。
あー助かった。
これで土合へ歩けると安堵したのもつかの間、
崖の沢を渡渉する箇所に出た。
崖の上を渡りたいが、
岩がぬめって絶対滑りそう。
滑って落ちたらケガは免れない。
そこで崖の下で沢を渡り、
登山道へよじ登ることにした。
が、よじ登る斜面が柔らかくて
足が固定できない。
草につかまるも
細い頼りないものしかなく
私を支えられない。
何度もチャレンジし
何度も滑り落ちた。
もうこれまでかと思ったが
一か所崖のすぐそばに
足場になりそうな岩を発見。
そこを足掛かりにして
なんとか登山道へよじ登ることに成功した。
泥だらけになりながら、
登山道ってすごいなとしみじみ実感する。
踏み固められた道でないと、
山は歩けない。
2mしかない斜面も上がれないんだ。
あー、登山道よ
ありがとう。
あなたがあるから私は山を歩ける。
そこから何とか土合橋まで歩き、
私を導いた標識を見つめた。
蓬峠9.5km
その道は非常に過酷で辛いものだった。
でもその中で見た
コバイケイソウのお花畑や、
登山道を見つけてホッとした時
進む前に振り返って見つけた
キンコウカで黄色く染まった斜面は、
決して忘れることのない
私だけのスペシャルな絶景だった。
今日の登山はいい経験だった。
が、それも生きて帰ってくることが出来たからこそ。
無事に下山できて本当に良かった。
とても疲れたので
しばらくは人の多い
踏み固められて
整備された登山道を歩きたい。


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